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運動と心

運動が心にどう影響するの?
「なんだか気持ちが落ち込む…」「やる気が出ない…」
そんなとき、あなたはどんな方法で心を立て直しますか?
実は、薬やカウンセリングだけでなく、「軽く体を動かす」ことが、心の健康にとって非常に効果的だと、多くの研究でわかってきています。運動と聞くと、「体を鍛える」「ダイエット」というイメージが強いかもしれませんが、実は心の健康にも深く関係しているのです。
現代のストレス社会では、多くの人が心の疲れを感じながら生活しています。就職活動の不安、仕事のプレッシャー、人間関係のストレス…。そんなとき、意外なほどに効果を発揮するのが「運動」なのです。
特に、就労移行支援を利用している方や、メンタル面に不安を抱えている方にとって、無理のない運動習慣は、心と体の回復にとても有効です。
運動で心が楽になる理由
1.幸せホルモンが分泌される
運動をすると、「セロトニン」「ドーパミン」「エンドルフィン」などの神経伝達物質が分泌されます。これらは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、気分の安定や快感、意欲の向上に深く関わっています。
特に「セロトニン」は、不安感を和らげて、心を穏やかに保つ働きがあるため、うつ病や不安障害の予防・改善にも効果があると言われています。
厚生労働省「こころもメンテしよう」キャンペーンでは、ストレス対策の1つとして「軽い運動」を推奨しています。
(参考:厚生労働省 こころの耳 )
2.自律神経が整う
ウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動を続けることで、自律神経のバランスが整いやすくなります。自律神経が乱れると、イライラ・不眠・食欲不振などの不調が起きやすくなりますが、運動を通じてこのバランスを整えることができるのです。
3.「達成感」や「自己効力感」が得られる
たとえ数分の運動でも、「やりきった」という達成感が得られると、自己肯定感が高まります。「今日もできた!」という感覚は、気分を前向きにする大きな力になります。
どんな運動がオススメ?
「運動」といっても、ジムに通ったり長距離を走ったりする必要はありません。大切なのは、“続けやすく、心地よいと感じる運動”を取り入れることです。
以下は、特に心のケアに効果的なオススメの運動です。
1.ウォーキング
最も手軽で、かつ効果的な有酸素運動。リズムよく歩くことでセロトニンの分泌が促されます。朝日を浴びながらの散歩は、体内時計も整い、心身のバランスを保つ助けになります。
2.ラジオ体操や軽いストレッチ
室内でもできる、取り組みやすい運動です。体を伸ばすことで血行が良くなり、気分転換になります。就労移行支援の訓練前後や、作業の合間にもおすすめです。
3.ヨガ・呼吸法
深い呼吸とゆっくりとした動きが緊張を和らげて、心を静かに整えてくれます。特に不安が強いときや、寝る前のリラックスタイムに効果的です。
4.音楽に合わせた運動(ダンスやエクササイズ)
音楽のリズムに乗って体を動かすことで、気分が高揚し、ストレスを吹き飛ばすことができます。YouTubeなどで「椅子ダンス」や「シニアエクササイズ」などを探すのも良いでしょう。
仕事のストレスを運動で解消する方法
仕事の疲れやストレスがたまると、どうしても気分が落ち込みがちになります。そんなときこそ、あえて「体を動かす」ことで、心をリセットしてみましょう。
1.通勤や移動を「運動」に変える
電車で座る代わりに1駅分歩く、エスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活の中に少しだけ運動を取り入れる工夫をしてみましょう。
2.昼休みに5分だけストレッチ
仕事中に体が固まると、心も緊張しやすくなります。休憩時間に首や肩、背中をぐるぐる回したり、足を軽く上げ下げするだけでも血行がよくなり、リフレッシュできます。
3.仕事帰りに「ウォーキングデトックス」
帰宅後、散歩をする習慣を取り入れてみましょう。夜の風に当たりながら歩くことで、1日の疲れやモヤモヤを外に流し出すイメージで歩くと、心がスッと軽くなります。
4.気持ちを切り替える“呼吸リセット”
ストレスがたまったときに、深呼吸を3〜5回するだけでも脳が落ち着いてきます。呼吸は自律神経を整えるスイッチのようなもの。ゆっくりと息を吸い、長く吐くことを意識してみてください。
まとめ:運動で心も体も元気になろう
「気分が落ち込む」「やる気が出ない」「不安が強い」——そんな時、私たちはつい「何か特別な治療や対策が必要なのでは?」と考えがちです。でも実は、心の健康のために難しいことをしなくてもいいのです。まずは、少しだけ体を動かしてみること。それが、心を立て直す第一歩になるかもしれません。
特に、就労に不安を抱える方や、復職・社会復帰を目指す方にとっては、運動は心と体を整える強力な味方です。実際、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準(2013年)」では、運動がうつ症状やストレス軽減に役立つことが明記されています[出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」]。
つらいときこそ、軽く体を動かしてみる
気分が沈んでいるときほど、私たちは動くことが億劫になります。でもそんな時こそ、あえて“ほんの少し”動いてみることが、気分の回復につながることが研究で明らかになっています。ハーバード大学の研究によれば、たとえ週に1時間の軽い運動でも、うつ病リスクを17%も減少させると報告されています。
たとえば、朝に1分だけストレッチする、テレビを見ながらラジオ体操をしてみる、散歩がてら近所のスーパーに歩いていく 、それだけでも十分です。大切なのは、「動いてみよう」と思うその気持ちです。
自信を取り戻すための習慣に
運動を継続することは、「自分で自分を整えられている」という自信にもつながります。体を動かすと、セロトニンやエンドルフィンといった“幸福ホルモン”が分泌され、気分が落ち着いたり、前向きな気持ちになれたりします。
また、日中に体をしっかり動かすことで、睡眠の質も向上します。夜ぐっすり眠れると、翌朝の気分も整いやすくなり、生活のリズムも整いやすくなり、その結果、面接や就労訓練にも前向きに臨めるようになります。
今日から始める“心のための運動”
心と体を元気にするための運動は、決して激しいトレーニングである必要はありません。ラジオ体操第1を1日1回だけやってみる。階段を一段ずつ意識して登る。背筋を伸ばして深呼吸する。どれも立派な“心の運動”です。
「今日も動けた」「少しスッキリした」、そんな小さな成功体験の積み重ねが、自分を肯定する力になっていきます。
参考文献・資料
- 厚生労働省「こころの耳」:
- 日本うつ病学会「運動療法のすすめ」:
- MedlinePlus(米国国立医学図書館)“Exercise and Mental Health”
- 文部科学省「体力・運動能力調査報告書」令和4年度版
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」
- 厚生労働省「健康日本21(第二次)」
- Harvard T.H. Chan School of Public Health (2018)