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統合失調症とは?

~仕事や就労支援を考えているあなたへ~
「自分はもしかして統合失調症なのかも…」
「仕事がなかなか続かない、周りとうまくいかない…」
そんな悩みを抱えている方にとって、統合失調症について正しく知ることは、これからの生活や働き方を考える上でとても大切なことです。統合失調症は決して珍しい病気ではありません。誰にでも起こりうるものであり、正しい理解とサポートがあれば、回復し、社会で活躍することも可能です。
このコラムでは、統合失調症の基本的な特徴や症状、治療方法、就労におけるポイント、支援制度までを具体的に解説します。実際に支援の現場で起きていることや、支援を受けて働いている方々の姿も交えながらご紹介します。
統合失調症とは
統合失調症は、脳内の情報処理のバランスが崩れ、思考や感情、行動に影響を及ぼす病気です。発症のきっかけは人それぞれですが、多くは10代後半から30代前半の若年期に現れます。
たとえば「自分の行動が誰かに監視されている」「テレビで自分のことが話題になっている」と感じたり、「誰かの声が聞こえる」といった体験が日常生活の中で現れ、強い不安や混乱を引き起こすことがあります。これらは本人にとって現実に感じられ、苦痛そのものです。
また、感情が乏しくなったり、話すことが極端に少なくなったり、何もする気が起きなくなるといった症状が長期間続くこともあります。こうした状態は、本人だけでなく家族や周囲の人々にとっても戸惑いや心配の種となることがあります。
症状の種類(陽性症状・陰性症状)
統合失調症の主な症状は、「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。
【陽性症状の例】
・幻聴:誰もいないのに、命令口調の声や侮辱するような声が聞こえる
・妄想:周囲の人が自分を害そうとしていると信じ込む
・思考の混乱:言葉が支離滅裂になる、会話がかみ合わない
これらの症状は、本人にとっては現実そのものであり、否定されるとさらに不安や孤立感が強くなってしまうこともあります。「誰かが部屋の外から話しかけてくるように聞こえ、怖くて仕事に行けなくなった」といったケースもあります。
【陰性症状の例】
・意欲の低下:食事や入浴など日常生活の行動すらできなくなる
・感情の平坦化:表情が乏しくなり、喜怒哀楽がほとんど見られない
・会話の乏しさ:自発的な会話が減り、必要最小限しか話さなくなる
陰性症状は周囲からは「サボっている」「怠けている」と誤解されやすいものです。実際には、本人もどうすることもできずに苦しんでいることがほとんどです。
統合失調症の原因と背景
はっきりとした原因は解明されていませんが、次のような複数の要因が重なって発症すると考えられています。
・ドーパミンなどの神経伝達物質の異常
・過度なストレス(職場の人間関係、受験、家族の問題など)
・遺伝的要素(家族に統合失調症の人がいるとリスクが高まる)
また、育った環境や性格の傾向も関係することがあります。たとえば、「真面目すぎる」「几帳面で完璧主義」「周囲の期待に応えようとする」などの気質を持つ人が、強いプレッシャーにさらされて発症することもあります。
統合失調症の治療法
統合失調症の治療は「薬物療法」と「心理社会的支援」を組み合わせて行われます。
【薬物療法】
抗精神病薬を用いて幻覚や妄想などの症状を軽減します。副作用が出ることもあるため、医師と相談しながら継続的に調整します。服薬をやめてしまうことで再発するケースも多いため、信頼できる主治医との関係性が大切です。
【心理社会的支援】
・認知行動療法:思考の歪みに気づき、より現実的な捉え方を身につける
・社会生活技能訓練(SST):対人関係のコツや、適切な自己表現を学ぶ
・作業療法:簡単な作業や創作活動を通じて生活リズムを整える
・訪問支援:地域で安心して暮らすためのサポートを定期的に受ける
支援者の中には、同じような病気を乗り越えた「ピアサポーター」もいて、本人にとって大きな安心感になります。誰かが「自分を理解してくれる」と感じられることが、治療の土台になることもあります。
職場で注意すべきポイント
統合失調症を抱える方が職場で安定して働くためには、以下の点に注意が必要です。
・静かな作業環境を選ぶ(刺激が少ない場所)
・業務の内容や手順が明確になっていること
・体調の変化を早めに伝えられる関係性を築いておく
・急な予定変更やプレッシャーの大きい仕事を避ける
当事業所では、就労前に「模擬業務」を通じて自分に向いている仕事や苦手な作業を把握するプログラムを実施しています。たとえば封入作業やデータ入力など、複数の業務を体験してもらい、実際の職場に近い環境を体験することで、安心して次のステップへ進めます。
職場への伝え方と配慮事項
病気をオープンにするかは本人の判断ですが、伝えることで合理的配慮を受けやすくなるメリットがあります。
・作業工程を「見える化」してもらう
・苦手な作業は分担してもらう
・わかりやすいマニュアルを用意してもらう
・ミスしてもすぐに責めない雰囲気作り
職場に病気を伝えるときは、支援者が同席するケースもあります。「どんな支援があると働きやすいか」を一緒に整理し、伝え方をサポートすることも可能です。
利用できる就労支援制度
統合失調症を抱える方が「働く」を目指すとき、利用できる支援制度があります。
【就労移行支援】
就職を希望する障害のある方に対し、最大2年間、職業訓練やビジネスマナー、履歴書の書き方、面接練習などの支援を行う福祉サービスです。体調や障害特性に応じて訓練内容を調整でき、実習や企業見学も行われます。
当事業所では、
・十三駅までの送迎
・工賃支給(軽作業や実務訓練をしながら収入が得られる)
・PC訓練、ビジネスマナー、グループワーク
・就職後の定着支援(定期面談・職場との連携)
などを通じて、統合失調症の方が安心して就職を目指せる環境を整えています。
【その他の支援制度】
・障害者就業・生活支援センター
・ハローワークの障害者支援窓口
・自立支援医療制度(通院費の軽減)
・精神障害者保健福祉手帳の活用(就職・交通・税制優遇など)
・地域活動支援センター、生活訓練事業所、グループホームとの連携
まとめ
統合失調症は、正しい知識と支援を得ることで、社会復帰や就労も十分に可能な病気です。発症しても「自分らしい生活」を目指すことができます。
「仕事が決まらない」「働きたいけど不安がある」「復職したいけど一歩が踏み出せない」
そんな悩みがあれば、ぜひ私たちの事業所にご相談ください。一人ひとりに合った支援で、あなたの未来を一緒に考えていきます。
私たちのサポートは「あなたが安心して働けるように」が第一です。どんな小さな不安でも、話してくださって大丈夫です。あなたの人生にとって、「働くこと」が自信と希望につながるように、心を込めてサポートします。
参考文献・資料
- 厚生労働省 統合失調症|こころの病気について知るhttps://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_03.html
- 日本精神神経学会「統合失調症について」
https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=59 - 厚生労働省「こころの健康についての正しい知識」https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_03.html
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001482954.pdf